ACID ANDROID LIVE 2021 #1.01

2021.11.22(mon)

ACID ANDROID LIVE 2021 #1.01

TSUTAYA O-EAST

 

 

 

 

yukihiroさんの優しさを全身に浴びてきた、そんなライヴでした。

かっこよかった、楽しかったという感想が出てくるより先に「優しかった」がまずはじめに頭に浮かんできました。はたしてそういうことが今までにあっただろうか、と自分でも少し驚いています。

パフォーマンスや音はいつものように鋭くて、むしろより一層攻めの姿勢が強まったように感じられたくらいなのに、会場内にはyukihiroさんの優しさが充満していました。それはもう言葉で言い表せられないほどの多幸感。yukihiroさんがとてもストレートに愛情表現をしてくれて、もはやあの場にいた全員がyukihiroさんに頭をなでてもらったのでは?なんて思ってしまいます。それくらいはっきりと優しさを肌で感じました。

yukihiroさんがどんどんどんどん優しくなっていくので、この先一体どうなってしまうんだろうとハラハラしています。

 

 

会場となったTSUTAYA O-EASTはフロアが横広でステージも高く、比較的どこの位置からでも見やすそうな箱でした。施設自体新しいようで、開場待ちの時間も含めとても快適でした。

 

ツアーのときとは少し異なるSEが静かに止まり、ゆっくりと暗くなる場内。

KAZUYAさん、山口さんがステージに登場し、大きな拍手の音が響き渡ります。たっぷりと間をおいてからyukihiroさんがステージの中央へ。

黒一色でまとめたシックな姿。トップスもスカートもパンツも少しゆったりとしており、衣装の戦闘力は比較的低め。しかし目元は強めのアイメイクでピリッと引き締められています。

客席に目を向けるその顔は1ヶ月ほど前に見たラルクyukihiroさんとはまるで別人で、ああ今日はACID ANDROIDを見に来たんだなとここで強く感じました。

 

マイクケーブルが床にあたる音が耳に届いた瞬間、体の中に湧き起こってきた懐かしさ。各地をまわった#1がずいぶん昔に思えますが、まだ半年も経ってないことが不思議でたまりません。

そのときにも聞いたはずの曲たちが、この日はまるで違う印象に聞こえました。明らかにアレンジされたものもあれば、聞こえてくる音色は同じでも歌い方が変化していたりと、タイトルに#1.01とあるようにただ同じことを繰り返すだけにはしないyukihiroさんのストイックさや、自身の音楽への愛情がひしひしと感じられました。

 

全体的に力強く、やや攻撃的な雰囲気があったというのが私個人の感想です。攻撃的といってもこちらに敵意を向けているのではなくて、少しエッジを効かせた演奏の仕方だったり歌い方をしていたのではないかなと思います。

1曲目のechoからyukihiroさんは強めに拳を握って上下させることが多く、体の中のエネルギーを外へ外へと放出させているように見えました。

また、今回は左手に限らず両方の手を歌に委ねて情熱的に動かしていたのも印象的で、数ヶ月の間があったにもかかわらず、そしてラルクを挟んだにもかかわらずyukihiroさんの手は見事に「歌って」いました。

 

yukihiroさんのすごいところって、ドラムだろうとボーカルだろうと、強烈に人を惹きつける表現力をもって音楽を奏でられることだと思うのです。yukihiroさんの根本にある「音楽を表現する能力・センス」がおそろしいまでに優れているからこそ、バンドでもソロでも多くの人を魅了し続けているのではないでしょうか。

素人の私は「ラルクに挟まれてのACIDは、いろいろと感覚を掴むのに苦労するんじゃないか…」なんて心配をしてしまいますが、yukihiroさんにしてみたらラルクでステージに立つこととACIDでステージに立つことにそこまで大きな違いはないのかもしれません。というか、才能に恵まれていて芯がブレていないyukihiroさんだから、ひとたびステージに立てばたとえどんな手段であろうとも人々を魅了してしまうのでしょう。

 

…ちょっと言い過ぎ感がありますが、私は本気でそう思っています。ライヴが進むにつれ、よりエモーショナルに歌うyukihiroさんの姿を見て、この人はドラマーとかボーカリストという枠を超えて、音楽の表現者としてプロフェッショナルなんだとしみじみ感じました。

 

 

むしろ、ACIDの感覚を忘れてしまっていたのは私の方で、echoの出だしの生ドラムを聞いてハッとし、ACIDの楽曲に生の楽器の音がのることに妙に感動してしまいました。

山口さんのドラムがよく見える位置にいたこともあり、彼の右サイドに設置されたシンバルの少し丸みのある音色や、スネアの叩き分け、細かなキックの連打などを目と耳で感じるたび、胸の奥がぽっと熱くなるような高揚感を覚えました。

また、初お披露目となったKAZUYAさんのフライングVも素敵でした。少し前のめりに演奏されている姿が記憶に残っていて、ステージ上で確かな存在感を放っていました。yukihiroさんを追っていたはずの目が、気付くとKAZUYAさんの方に向いているなんてことも多々ありました。

 

 

ACID ANDROIDのライヴ」の感覚を体に呼び起こしてもらったecho、続くintertwineではキッと正面を見据えたまま少し甘い声で歌い上げていくyukihiroさんに悶絶しました。見た目と声のギャップに心臓が張り裂けそうになります。

imagining noisesはまるでこちらの様子を窺っているよう。「いくの?いかないの?俺はいくけどね」と言わんばかりの表情で、確実にこちらの気持ちを引っ張り上げていきます。

緊迫感溢れるpale fire。随所で差し込まれる音の空白の中でも動きを止めないyukihiroさんを見ると、この人の中には常にリズムが流れているんだなと感じます。そしてyukihiroさんが振り下ろす手によってまた空間が音で満たされる。完全なる支配者。

ライヴで観客を扇動するのは必ずしもアップテンポな曲だけではないということをdouble dareでいつも思い知らされます。拳を突き上げ飛び跳ねたくなるのとは違うけれど、胸のドキドキが高まってじっとしていられなくなります。それはきっとyukihiroさんの歌声に生々しい体温が感じられるから。

 

rosesからchillのイントロまではマイクスタンドを設置。

マイクスタンドによってrosesでの妖艶さがだいぶ落ち着きました。#1では本当に死人が出るんじゃないかというくらい、容赦なく色気大放出していたyukihiroさんでしたからね…。ただ、この日も左手を自身の右腰へ添わせたまま歌っていて、そんな風に体に触れながら歌うのには何か理由があるのかと考えたりもしました。答えは出ていません。

 

roses、unsaid、division of timeというブロックは、穏やかにゆったりとACIDの世界観に浸れる時間でした。ライヴハウスでありながら周囲の人と体が触れ合わないという今の環境は、音楽に没頭するのにとても適していると感じます。全身のすべての感覚を目の前で鳴っている音楽に向けることができるからです。

時折客席にも目を向けながら、儚さと強さが同居した声を響かせていくyukihiroさん。rosesでは後半の盛り上がりに合わせて、ステージに広がる淡い紫色の光の中に鮮やかな赤い光の帯が数本伸びました。その赤い光はやがてひとつだけになり、ステージ中央に立つyukihiroさんをじわっと染め上げ、最後は暗闇に包まれました。咲き誇ったバラの一生を表したような演出はとても感動的でした。

 

(その一方で、紫と赤というカラーリングに覚醒した初号機を思い浮かべていた私。赤い光がちょうど目のように見える配置だったので、この様子をyukihiroさんが見たら同じように思うかな…と妄想していました。全然音楽に没頭してなくて笑う。)

 

yukihiroさんが見えなくなるほどに明るさが極限まで抑えられることが多かったunsaidですが、この日はしっかりとyukihiroさんの姿を確認できる照明でした。マイクを握った指が意識とは別にピクッと動く様を見るのが好きです。

マイクスタンドによって動きが一部制限されますが、それでもこの日のyukihiroさんはこれまでよりもほんの少しダイナミックに体を揺れ動かして歌っていたように思います。division of timeではより一層声に感情を乗せて。切なく絞り出した一番最後の「焼き尽くして」の声色にyukihiroさんの表現力が爆発しており舌を巻きました。

 

歌声に聞き入り、心地よさのあまり少しぼんやりとした頭でステージに目を向けていると、マイクにかけた左手をぴょこっと上げたyukihiroさんの姿が飛び込んできて一瞬で目が覚めました。まるで「よっ👋」と挨拶をしたように見えてフリーズしてしまったのですが、そのときの決定的瞬間がなんと公式facebookに掲載されていたのです。いや、カメラマンさんグッジョブすぎますしそれを選んでくれたのも最高すぎます。なおお写真はめちゃくちゃにかっこいいので「よっ👋」感は皆無です。念の為。

 

chillが始まるとゆったりとした動きでマイクスタンドを後方へ下げ、熱を帯びた客席をふわっと見渡しました。きっとこのときから優しい目をしていたのではないかと思います。

勘違いかもしれませんが、chillでyukihiroさんが手を差し出してくれるのは客席とのコミュニケーションのためのような気がしています。yukihiroさんの手にはいつだって意思が宿っていますが、ここで差し伸べられる手には「対話をしよう」という明確な思いが込められているように思えてなりません。

実際に触れることはできなくても、直接話しをすることができなくても、あの瞬間には間違いなく相互のコミュニケーションが生まれていますし、通常のやり取りよりも純粋で強固なものに思えます。「あのyukihiroさんと対話できている!」というとてつもない喜びは他ではきっと味わえないので、ぜひとも皆さんにACIDのライヴへ足を運んでいただきたいです。そしてみんな左手の虜になってしまえばいい。

 

さっきまで対話してくれていた左手にyukihiroさんの個人的な熱が流れ込んできて、徐々に支配されていく様を見届けるのもまた最高です。手のひらをギュッと握り締め、首の横まで持ち上げて歌う姿に心を鷲掴みにされました。

 

gravity wallからはギアがひとつ上がったかのようにステージ上の熱気が増しました。一歩後ろへ下がっていたyukihiroさんが勢いよく前へ歩み出てきたその迫力にビクッとしたら、近くにいた方も同じように体を反応させていて勝手にシンパシーを感じました。大袈裟な行動をしないのでパッと見はわかりにくいですが、纏うオーラをまったくの別物へと変化させてしまうyukihiroさん。自由自在にオーラを操ることができるのか、はたまた無意識なのか。

 

両手で持ったマイクをお腹の前まで下ろし、上に被せた方の手は人差し指から小指までをピンと伸ばす。顔は斜め上を見上げてふっと小さく一息。

私は視野が極端に狭くなるので、こういうときどこに注目すべきか本気で悩みます。悩んだ結果、手元を凝視させていただきました。自分でも「でしょうね」と思います。

思い返せばこの日はyukihiroさんの手遊びが多かったです。言葉で表現しづらいような複雑な指の絡ませ方をしていたり、右手で左手首を掴んだと思ったらそのまま袖の中まで潜り込んでいったり…。美しいyukihiroさんの手を眺めているだけで寿命が伸びそうです。生きる養命酒。(?)

 

dealing with the devil以降は7月の渋谷で披露されていないので、この日ようやく聞くことができたという方もいらっしゃったことでしょう。私自身あるフォロワーさんのことが頭に浮かび、「新曲やっと聞けましたね!最高ですよね!」と心の中で勝手に話しかけておりました。

 

個人的に盛り上がったのは、まだ名前も発表されていない新曲のうち2番目に披露された方で、yukihiroさんの歌い方が#1のときから大幅に進化していて震えました。

かつては最初から最後まで淡々とあまり抑揚をつけずに歌っていたと記憶しているのですが、この日はまず声量が増していました。自信を持って強く語りかけてくるかのように、ひとつひとつの言葉がはっきりと放たれる様に圧倒されました。そして抑揚が明確になり、少し息を抜きながら歌い終えるテクニックに鳥肌が立ちました。

ぼんやりとしていた輪郭がくっきりと現れたような、そんな変化にわくわくし、曲が終わったあともしばらく興奮が収まりませんでした。

もうひとつの新曲も体の中から熱くなるような曲で、これからライヴで演奏されるたびどんどんかっこよくなっていくことが容易に想像できます。歌詞の中に「プログラム」と入っている気がして、何を歌っている曲なのか知りたくてうずうずしてしまいます。

 

 

わかっているだけでも4曲の新曲があるというのに、dazeまでバージョンアップさせてきたyukihiroさん。まったく新しい曲が聞けることも嬉しいですし、yukihiroさんの最新の感覚が落とし込まれた既存の曲を聞かせてもらえることもこの上なく嬉しいです。

 

しかし生まれ変わったdazeには以前のように一体感を持って拳を上げるような雰囲気がなく、やっぱりこれからはこういう感じなんだな…と思っていたところへのlet's dance。最初は少し様子見をしてしまいましたが、yukihiroさんはまさに「一緒に踊ろう」というようにフロアを煽ってくれました。yukihiroさんが手を振り上げ、それに続いて客席からたくさんの手が挙がる。カウントダウンに対してかなりフライング気味に突き立てられた「1」を表す人差し指も、お客さんのほとんどがそれを待ち望んでいることを受けてyukihiroさんが見せてくれたものだと思うと嬉しくてたまりません。

 

熱気に包まれるviolent paradeもACIDならではの空気。気付けばyukihiroさんのシャツの第一ボタンが外されていました。ステージもフロアもお互いに熱くなれるライヴになって本当に良かったと感じています。

 

そして最後のviolator。それまでyukihiroさんの左斜め前に佇んでいたタブレットをそっと脇へ退かし、ぐいぐいぐいと前へ歩み出ると最前列のお客さんの顔をしっかりと見つめるようにしゃがみこんで歌い始めました。コロナ禍に行われたライヴの中で史上最高に距離が近かったのではないでしょうか。yukihiroさんの方から、この2年の間にできてしまった見えない壁をぶち破ってくれた瞬間でした。

まっすぐ前を見つめながら左手を正面にかざし、言葉の代わりにその手でたっぷりと思いを届けてくれました。左手の向きも微妙に変えながら、あの場に集ったすべての人に挨拶をするかのように、それと同時にひとりひとりの思いを受け取るかのように、とても長い間手をかかげてくれていました。

 

曲が終わると、改めて全体に視線を投げかけてから、ラルクのツアーでも恒例の体の前に手を添えるお辞儀をひとつして去っていきました。続いてKAZUYAさん、山口さんも達成感に満ちた安堵の表情でステージを後にされたのでこちらもほっとしました。

 

 

6月12日の新潟から始まったLIVE 2021 #1が、この#1.01をもって終劇しました。

本当に楽しい日々でした。yukihiroさんの熱量や、ステージ上の3人によって作られる音がそのときどきで変化する様を肌で感じることができたのはとにかく幸せなことでした。

その上、#1.01ではこれ以上ないくらいのyukihiroさんの優しさを受け取ってしまったので、ますますACID ANDROIDへの愛が増してしまいました。笑

 

また次があることを心から願っています。

素敵な夜をありがとうございました!