-aapitb-

2022.07.01(fri)

-aapitb-

ACID ANDROID / People In The Box

Spotify O-EAST

 

 

 

 

相方さんが取ってくれた20,21番のチケットで入場。2列目の中央エリア(やや下手より)で開演を待ちました。

ステージ上にはすでにACID ANDROIDのセットが用意されており、開演10分前頃になるとスタッフさんが現れて最後のチェック開始。

yukihiroさん用のタブレットがスタンドに設置された状態で運び込まれ、マイクスタンドの右側、つまりステージの下手側に置かれました。これまでは上手側に置かれていたはずなので、今日のライヴが今までとはまた違ったものになりそうだという予感が早くも漂い始めます。

 

ほぼ定刻通りに暗転し、下手袖からKAZUYAさん山口さんが登場。いつまでも鳴り止まない拍手はそのままお客さんの期待度の高さを表していたと思います。

 

静かに現れたyukihiroさんはDEPECHE MODEのTシャツ、スキニー、ショートブーツというシンプルなスタイルで、全身黒で統一。アクセサリーは指輪とブレスレットのみ。長く伸びた襟足が首にピタッと沿ってデコルテへ流れ、少し傷んだ毛先の質感も確認できました。もみあげは短め。前髪は厚めで眉毛こそ隠れていますが、目にはかからない長さなので本人もライヴ中に髪を気にするそぶりはほとんど見せませんでした。ひとつ記憶に残っているのは、曲間で背中を向けているときに左手で後頭部の髪をわしゃっと掴んでいた姿。

自然の陰影とも思えるほどナチュラルなアイメイク。淡いブラウンベージュで少しアイホールに立体感をつけた程度に見えました。

 

マイクスタンドを後方へ下げ、左手にマイクを握った状態で始まったchaotic equal thing

タブレットがこれまでと逆位置に設置されたのは、やはりマイクを持つ手を左に変えたからなのでしょう。LE-CIELでのインタビューで語っていたことがここに繋がってきました。

 

軽く握った右手はお腹の前でドラムと同じリズムを刻みます。心なしかその動きが少し堅く見えました。ピンと立った親指の先がピクピクと動いていたのは恐らく無意識のもの。

黒い半袖から伸びる白い肌、浮き上がる血管、手先の動きと連動して収縮する腕の筋、光に照らされ金色に見える腕の毛。ライヴハウスyukihiroさんが半袖を着たのは去年のツアーの新潟、長野ぶりでしょうか。大量の情報が視覚に飛び込んできて処理するのに必死でした。

 

後のPeopleのステージで「1曲目がchaoticで緊張した!」と山口さんがおっしゃっていましたが、そんな緊張など微塵も感じさせないほど安定した、鋭くて気持ちのいいドラムでした。細やかに音を繰り出しながらダイナミックさも併せ持つ、純粋に「好きだな」と感じる演奏と音。10年もの間ACID ANDROIDのライヴを支えてくれた頼もしさと、山口さんからyukihiroさんへのリスペクトを肌と耳で感じました。

 

pale fire

右手でタブレット画面をスワイプする姿がとても新鮮に映りました。歌いながらチラチラと画面へ向けられる視線。本人はまったくそんな気ないはずですが、色気が強すぎます。目を細めてみたり、あごを上げた状態で視線だけグッと落としたり、横目で見たり…とバリエーション豊富。yukihiroさんとタブレットを結んだ直線のちょうど延長線上に立っていたため流れ弾くらいまくりでした。

 

NEW SONG

攻めの姿勢で歌うyukihiroさん。でも勢いで突き進むのではなく、歌のテクニカルな部分を常に意識しているのも感じられました。

両手で握ったマイクをお腹の前に構え、人差し指〜小指をまっすぐに伸ばして両手を絡ませ合います。手指の美しさを惜しげもなく見せつけてくるボーナスタイム。すかさずカメラマンさんもシャッターを何度も切っていました。

 

後ろを向き、次の曲が流れるのを静かに待つyukihiroさん。rosesのイントロが聞こえてきてからマイクスタンドを持ち上げ、ステージ前方へ歩み出ます。

頭の高さくらいまでマイクスタンドを持ち上げたときの左手の美しさに目が眩みました。指先がきちんと揃った様にめっぽう弱いです。

マイクを差し込み、足元のケーブルを丁寧に手で払っていました。足じゃないんだ…と変なとこで驚き。

顔はマイクにまっすぐ向き合いながら、目のみを斜め下のタブレット画面に流します。ほんの少し見辛そうにして目元にシワが寄る様がかっこよすぎました。

紫とピンクの中間色がyukihiroさんの体を染め、これまでの数曲に比べ顔に当たる光が少なくなり、視線の行方が明確には捉えられなくなりました。するとどうなるか。タブレットの方向へ目線を動かすたび、目の中の光がこちらを向いているような錯覚を起こすわけです。照明によって作り出された妖艶な雰囲気と、マイクスタンドに縋りつくような姿勢も相まって、yukihiroさんの色気が花火のごとく辺り一面に飛び散ります。本日の「そんな目で見つめないでNo.1」でした。

 

また、毎度おなじみではありますが、マイクを握り締める右手のかたちが一生ツボです。人差し指中指、薬指小指に分かれるように指を広げマイクへと滑り込んでいく一連の流れが艶かしすぎて怖い。歌いながら左手人差し指がピンと跳ね上がる様子に心臓がミチミチに締め付けられました。

 

「anonymous flower, resembling roses...」を丁寧に丁寧に歌い上げ、少し歯を食いしばるような表情も。

 

NEW SONG 

去年のツアーの宇都宮で初めて聞かせてもらったときよりも、だいぶ言葉がはっきりと届いてきました。が、なんと歌っていたのかもう覚えていません。「誰のもとにも届かない」というような否定系の入ったyukihiroさんらしい世界観。諦観しているかのような歌詞、とても好きです。

 

gravity wall 

例えばこのイベントで初めてACID ANDROIDを見たという人に今のACID ANDROIDを説明する1曲を挙げるとしたら、この曲が最適なのかもしれないなと思いました。

最新アルバムであるGARDENからセットリストに組まれたのはrosesとashesとgravity wallでした。このうち、rosesとashesはシングルとしても発売されているので、純粋なアルバム曲の中から選び出されたgravity wallには何かしらの意図があるのでしょう。

これまでやってきたワンマンのセットリストを考慮してというのももちろんあるかと思いますが、なんとなくこの曲を披露しているyukihiroさんは自信ありげに映るのです。なんとなくですけどね。

この曲の特長とも言える間奏部分での、渦の中へと引きずり込まれるような感覚に陥るリズムとギター。「飛ぶ」とか「トリップする」という体験を何度もライヴで味わってきました。

もし-aapitb-でACID ANDROIDに初めて触れ、gravity wallに心を掴まれた方がいらしたら、ぜひぜひワンマンにも足を運んでいただきたいなと思います。

 

マイクを手放し、ただただ音に没頭しているyukihiroさんの姿がとても魅力的で目が離せませんでした。

 

let's dance 

ガラリと切り替わる世界。色とりどりの光がステージに踊ります。その鮮やかな色たちを従えたyukihiroさんの顔には光が当たらず、影で覆われていました。華やかな背景と暗い人影という対比に心が強く惹きつけられました。

手や体を使った煽りこそないものの、「手を差し出せ」「call up」でやや捲し立てるような雄々しい声を放ちます。それで十分すぎるほど。

山口さんの研ぎ澄まされたドラムがハッとするほどかっこよかったのを覚えています。

 

dealing with the devil

攻めと伸びやかさ、その両方をyukihiroさんのボーカルから感じ取れる極上の一曲。大好きです。

 

ashes

黄・緑・白の光が下手から上手へと順に流れながら場内に伸び、合間合間でyukihiroさんたち3人を頭上からも照らします。

体の中の熱が高いのかタブレットをスワイプする手に勢いがあり、大きく振り払うような所作でした。しかも左手。感情的な一面がチラッと見えるとなんとも言えない高揚感が生まれてきます。

 

灰が音もなく降り積もっていくような厳かな雰囲気さえ漂う中、yukihiroさんは熱さを抑えることなく山口さんの打ち鳴らすクラッシュに合わせ大きく腕を振り下ろします。また、間奏で一歩後ろへ下がった状態から歌の入りと同時に力強くマイクを掴み、顔を寄せていく様もとてもアグレッシブでした。

(その際、右手がマイクを掴み損ねほんの一瞬手元がバタつきましたがすぐに立て直す)

 

マイクを握り締めているときに手首から肘へと伸びる筋が浮かび上がる様に見惚れてしまいました。あの筋はなんだったんだろうと調べてみたらどうやら「尺骨」という骨のようです。(違うかも)yukihiroさんの身体を見ていると解剖学を学びたくなってきますよね。

 

体の横に下ろした手、その手のひらが見えるともれなく興奮してしまうということがわかりました。(世界一いらない発見)

自分のいた位置的に、右手を下ろしているときは手の甲がこちらを向いていて(たまに手首を返して手のひらが見えることも)、左手を下ろしたときには手のひらが完全にこちらを向いていました。歌の強弱に合わせて握ったり開いたり。やっぱり私は左手のエモーショナルな動きが好きです。

服を少し掴みながら自身を抱き締めるように歌うのもずるかったですね。勝てるわけない。

 

 

Tシャツにスキニー、ナチュラルなヘアメイクという飾らないいでたちゆえに年相応なyukihiroさんも垣間見えましたが、「Tシャツ・スキニーでこんなに決まる50代いるか?」と我に返りました。先日Lillies and Remainsのライヴを観に行きましたが、30代であろう彼らの中に紛れてもなんの違和感も発動しないことは明らか。

そしてyukihiroさんのお顔立ちには男性らしい強さや鋭さもありながら、どこか女性っぽい品の良さも感じられました。つまりは男性・女性両方の魅力を兼ね備えた美人。yukihiroさん年を重ねるごとに美貌が増してます。すごい。

 

ashesが終わると、やや遠慮がちな紳士風のお辞儀をしてステージを去っていきました。

いつものように顔の前でパンと両手を合わせた山口さんからは達成感が伝わってきましたし、爽やかに手をあげフロアに挨拶をしてくれたKAZUYAさんも久しぶりのACID ANDROIDのライヴを楽しんだ満足感みたいなものが表情に出ていたと思います。白いフライングVを時に激しく、時に繊細に奏でるKAZUYAさんとても素敵でした。

 

 

転換を挟み、このイベントのホストであるPeople In The Boxの出番へ。

ACID ANDROIDの配置に比べ、全体的にかなりステージ前方に各機材が置かれており、もちろんPeopleの皆様方もとても近くてドキドキしました。

響き渡る波多野さんの声の、なんと透き通って軽やかなこと。一気に惹きつけられました。

ベースの福井さんの落ち着き、丁寧さも間違いなく魅力的で、激しい曲では楽曲をグイグイと引っ張っていくベースの鋭さにやられました。

そして、我々が決して足を向けて寝ることのできない山口さん。本っ当にドラムが上手いんだと驚きっぱなしでした。ACID ANDROIDのライヴでは見せないような様々なテクニック、奏法に釘付けになりました。

 

さらにはa moon tonightをカバーするという粋すぎるサプライズも。これは波多野さんのリクエストだったようで、ACID ANDROIDを山口さんに勧めた波多野さんは実はDIE IN CRIESをゴリゴリに聞いていたとのこと。縁というのは確かに存在するんだなあと、心底嬉しそうに話す波多野さんの表情を見て思いました。

 

波多野さんのふわっと柔らかな声、福井さんのシンベ完コピ(山口さんがリハ終わりにひとりで自転車漕ぎながらやべー!と叫ぶほど)、福井さんに負けず劣らず再現度の高い山口さんのドラム、これ以上ないほどのカバーでした。

 

楽しいな、すごいなと思って見ている間に終わってしまったPeople In The Boxの出番。限られた時間の中でしっかりとMCもしてくださったのでその分曲は少なかったのかな…と思いきや8曲もやっていてくれたんですね。まだまだ聞きたかったなあ。

 

 

Peopleさんたちが捌けてもステージは薄暗いまま。まもなくしてスタッフさんがぞろぞろと現れ、忙しなくステージ下手側に何かを準備し始めました。ざわつくフロア。シンバルやバスドラムが運び込まれると短い歓声が上がりました。

 

波多野さんが「今日しか見られないものが見られると思います」と匂わせていたのは、ACID ANDROIDPeople In The Boxによるガチコラボ『聖者たちremixed by yukihiro』の一夜限りの生披露だったのです。

ステージの準備が整い、山口さんに呼び込まれて姿を現したyukihiroさんは-aapitb-のグッズTシャツに着替え、手元のアクセサリーをすべて外した状態。靴もいつものコンバースに履き替えていました。

 

スネア、バスドラムハイハット、クラッシュというシンプルすぎるセットに向かうyukihiroさん。ステージ中央を向くように組まれたセットのため、客席からはyukihiroさんの右半身を障害物0で見れてしまうという信じられない事態に。

しかし当の本人はフロアのざわつきなど気にも留めず、バスドラムのペダルに足を乗せ、軽く機材を確認し、スティックを回して穏やかな表情で山口さんを見つめていました。

聖者たちのリミックスは大変でしたか?という質問に対し、視線を上に向けてうーんと悩んでから「楽しかったです」と一言。マイクはないので肉声がそのまま場内に届き、フロアからは小さな悲鳴。

 

とても言葉では言い表せないほど、yukihiroさんの表情は穏やかなものでした。

うっすらと口角の上がった状態のまま、山口さんとしっかりアイコンタクトをしていよいよ一夜限りの演奏がスタート。

丁寧にドラムに向き合いながら、アクセントとなるショットを打つときには山口さんと目を合わせてタイミングをぴったりと合わせていました。「ここで、こうだよね?」「次はこう!」という言葉が聞こえてきそうなくらい本当に楽しそうに演奏していました。

また、yukihiroさんはゆったりとした余裕もまとっていて、後輩を温かく見つめる眼差しがやさしすぎました。

 

山口さんと目を合わせる以外では自身の足元に視線を向けていることが多かった気がします。バスドラのペダルを踏むときの、細かなつま先の動き。まさかこんなに近くで見られるなんて思ってなかったので興奮と感動で頭いっぱいでした。30thラニバツアーで見られたときでさえ相当興奮したのに、ほんの2メートル先って…冷静に考えてありえないです。キュッと引き締まった美脚も最高でした…

 

KAZUYAさんはステージの奥にいて、私の視界だとちょうどyukihiroさんと被ってしまっていたのですが、スッと差し込まれたギターの音色の美しさが強烈に記憶に残っています。ACID ANDROIDPeople In The Boxの5人が聖者たちを演奏していたあの時間は、本当に貴重で夢のようでした。

 

終始にこやかだったyukihiroさんは最後各方向へペコペコとお辞儀をしてゆっくりとステージを後にしました。思わずこちらもお辞儀をしてしまったくらい、それはそれは丁寧な挨拶でした。

 

 

 

いつもにましてまともな感想が書けていないのは、最後のサプライズで完全に頭がおかしくなったからということにさせてください。笑

それにしてもACID ANDROIDPeople In The Boxの相性が良すぎてびっくりです。想像の何倍も素敵なイベントでした。vol.2、vol.3と続いてくれたら嬉しいなあ。

 

 

 

9月からはいよいよPetit Brabanconのツアーが始まりますが、まだもうしばらくは-aapitb-の余韻に浸っていようと思います。

 

改めて、幸せなひとときをありがとうございました!