ACID台北レポの続きです。
前編はこちら
新曲(gardens of Babylon)
今思えばここからがライヴのラストスパートだった気がします。
チカチカと点滅する照明に急かされて、じっとしていられなくなってくる。
間奏部分でPerfumeみたいに加工されたyukihiroさんの声が流れたんですが、これ今までもありましたっけ??
初めて聞いた気がして一瞬固まりました。
早くアルバムで確認したい。
chaotic equal thingが聞こえてくると同時に大きな歓声。
あえて抑揚をつけない歌い方、それなのにものすごい引力で引っ張られるような感覚になるのが本当に不思議。
シンバルのカップ部分を叩いたときの鋭い金属音が、静かな中に響き渡る。
殴るように腕を振り下ろす動きも増えてきました。
後ろを向いて水を飲んでる間に流れ始めたdaze。
こちらに振り返ると、1〜2列目くらいのお客さんの顔をひとりひとりしっかり見るようにゆっくり首を左右に振る。
歌ってる間もじっくり見てました。
盛り上がるお客さんを見てうんうんって頷いたり、顔にかかった髪を小指でゆっくり払いながら歌ったり。
髪を払うといえば、この日はところどころで髪をとかす仕草も見られました!
髪の内側から手を入れて、毛先に向けてさら~~っと滑らせて。
まさにこんな感じ。
右手にはマイクを持っていたので、左手を使って右側の髪をとかしていたんですけどね。
客席に視線を向けたままこれをやられていたので、色気がすごかったです。
ライヴ後半になると汗で髪が張り付いたのか、鬱陶しそうにしていた表情が最高でした。
dazeと、この次にやったegotistic idealもすごく歌い慣れてる感があって、お腹から出てるような安定感のある低い声に完全に心を持っていかれました。
「make up your mind」で振り上げられる左手に、会場全体が揺れる。
テンポが上がる間奏部分で沸き起こった歓声。
あれはテンション上がりますよね。
yukihiroさんからも熱が出てるようでした。
ちょっと順番は前後しますが、daze・egotisitic ideal・violent paradeの3曲はすごく声が出ていて、迫力が感じられました。
逆に、the end of sequence codeとかashesは声量が落ちてしまって、yukihiroさんも心なしか声を出しづらそうでした。
(ashesは曲調が違うので比較するべきではないかもしれませんが…)
だからといって盛り上がっていなかったわけではもちろんありません!
the end of ~は確か赤い照明だったかな?
yukihiroさんは赤が本当によく似合うなと思いました。
そしてKAZUYAさんのギターは何度聞いてもかっこいい。
曲が終わり、大歓声が上がる。
でもなかなか次の曲がかからない。
yukihiroさんが何か言いたげにフロアを見渡してたので、まさかMC!?と一瞬思ってしまいました。
少し経ってviolent paradeが流れ始めましたが、あの間はなんだったんだろう。
私の感覚がおかしかっただけかもしれませんが。
満足したようなyukihiroさんの表情が今でも脳裏に浮かびます。
恐らくこの日一番の盛り上がりを見せたviolent parade。
「violent」という名の通りお客さんもyukihiroさんも激しめに暴れる曲なのですが、今までにないくらいyukihiroさんがめちゃくちゃ優しかったんです。
勢いはあるけど殺気立ってないというか。
お客さんはyukihiroさんに夢中になって、yukihiroさんの意識は100%客席に向けられてたように見えて。
いつぞやのライヴで動員数が最少だったとき(確か北海道)、yukihiroさんが「お前ら全員覚えていってやるからな!!」とおっしゃったそうで。
それに近いものがこの台北ライヴにもあったように思います。
初めてワンマンをやる異国の地で、一体どんなライヴになるのかきっと本人にもわからなかったはず。
約10年ぶりの海外公演。
そのときとはスタッフさんもメンバーも、もちろん曲も違う。
ましてや初めての台北。
…そして椅子あり(笑)
未知数な要素をたくさん抱えたまま挑んだライヴだったのではないでしょうか。
それが、実際始まってみれば目の前には精一杯声をあげて拳を突き上げるお客さんたちがいて。
新曲にもかかわらず大きな歓声が沸き起こって。
こんなにも待ち望んでた人がいたことを目で見て肌で感じて。
きっと、というか絶対、嬉しかったはずです。
そうじゃなければviolent paradeであんな穏やかなオーラが出るわけないです(笑)
全力で盛り上がるお客さんに向けて、手のひらを上にして指をクイクイッと動かし招き入れるように煽る。
さらには、ステージの前方まで進み、その場でしゃがんで歌う!
その位置はまさにファンの子たちが作った横断幕の目の前。
ドセンの子ひとりだけをじっと見つめながら、かなり長い間しゃがんでいました。
指を動かし再び煽る仕草も。
立ち上がったあともまだその場を離れずに、マイクを持った右手を高々と掲げる。
真っ白な光がyukihiroさんを後ろから照らすと、ドラムに合わせて右手を3回振り下ろす。
私たちファンに合わせて一緒に振ってくれたように見えて、どこまで優しいんだyukihiroさん!!ってなりました。
そのあとはしっかりファンを見据えたまま、たたみかけるように歌い上げていきました。
曲終わりにマイクをポイッて落としたように見えて「!!!??」ってなったのですが、見間違い…?
手からするっと滑らせてたのかな…
violent paradeの最後って、息が苦しくなって頭の中いっぱいいっぱいになるんですが、それを断ち切るようにザンッて終わるじゃないですか。
一瞬意味がわからなくなって「あれ…夢だった…?」ってボーッとしちゃうんですけど、まだ目の前にはyukihiroさんがいるから夢じゃなかったって安心できる。
なので、violent parade→ashesの流れが大好きです♡(説明長くてすみません)
体の周りに熱気をまといながら、マイクスタンドを取りに行きステージ中央に設置。
あぁもう終わっちゃうのか…
なんて寂しがっている場合ではなかった。
こんなに感情的で、躍動感があって、心に突き刺さってくるashesは初めてでした。
マイクスタンドにすがりつくように首も体もななめに傾けて、マイクを握る手には力を込めて、全身で歌っていました。
両手をマイクに乗せたまま顔だけを下手に向けたとき、バチッと目が合った気がして息が止まる。
今まで見てきたashesは、violent paradeで高まった熱を冷ましていくような静かで落ち着いたものだったのですが、この日はyukihiroさんの熱が全然冷め切っていませんでした。
体の中の熱をすべて出し尽くすように、感情を抑えることなくマイクにぶつけていく。
全身を大きく揺らしながら歌う様は、hydeさんのようにも見えました。
そんなyukihiroさんに応えるように、スティックを振り下ろす山口さんの腕にも力がこもる。
左、右と時間差で鳴らしたシンバルの音が重なって響いていく瞬間は、耳に意識を集中させました。
やがて最後の音が消えてなくなるまでyukihiroさんはその場に佇んでいました。
そして左手をまっすぐ前に伸ばし、パッと開いてからステージを後に。
ステージ袖には階段があったようで、しっかりと縁を掴む左手と、一段一段降りていく足音を確認。
山口さんは立ち上がったあと、顔の前で2回手を叩き、両手を合わせてペコッと挨拶してくれました。
そのときの笑顔がすごく素敵でした!
誰もいなくなってしまったステージに、熱心にぶつけられるアンコールの声。
客電は点いているけど、ステージ上はまだ暗いまま。
スタッフさんも出てこないし、終演のアナウンスも流れない。
期待が高まり、ますます大きくなる声と手拍子。
もしかしたら…と一瞬思いましたが、KAZUYAさんのアンプの電源が落とされてしまう。
それでも台湾のファンからのコールは止まなくて。
アンコールはだんだんと「yukihiroさん!」や「ありがとう!」という声に変わっていく。
終演のアナウンスも流れ、ドラムや機材をテキパキと片付けていくスタッフさんたち。
それでもまだ声をあげ続け、その場にとどまるたくさんのファン。
どれだけこの日を待っていたんだろう、準備にどれだけの時間と労力をかけてきたんだろう、そして目の前にyukihiroさんが現れたときどれだけ嬉しかったんだろう。
あの1時間半の幸せを、きっとあの人たちは一生忘れることはないのでしょう。
いつまでもyukihiroさんの名前を呼び続け、つたない日本語でありがとうと伝える台湾の方々を見ていたら胸がいっぱいになりました。
すると、その中のひとりから「yukihiroさんお誕生日おめでとう!」という声が。
そして続けられたのはハッピーバースデーの歌でした。
もうそこにはいないyukihiroさんに向かって、何度も何度も繰り返される歌。
ここで涙腺決壊。
yukihiroさんは異国の人だからめったに会うことはできないし、ましてや直接思いを伝える機会なんてごくわずか。
だからこそ、この日はとても貴重で大切な日でした。
台湾に来てくれたことへの感謝を伝えたい、そして誕生日をお祝いしたいという純粋な欲求。
その健気さがこちらの感情までも揺さぶりました。
どれだけ声を枯らして名前を呼んでも、手が痛くなるまで叩いても、yukihiroさんが再びステージに立つことはありませんでした。
そのかわり、ステージの中央にはファンの思いを全部受け止めるようにして静かに佇むマイクスタンド。
それがyukihiroさんの答えでもあったように思います。
いつかまたここに戻って来てくれることを願わずにはいられませんでした。
フロアのあちこちには喜びを抑えきれないファンが、興奮気味に語り合う姿。
ステージをバックにして写真を撮る人も。
二度とこのときは戻らないけど、取って代わることのない思い出としてそれぞれの中に刻まれたはず。
上海・台北用のフライヤーには「幻形」という中国語が載っていました。
まさに幻のような、魔法にかけられたような時間を過ごさせてもらいました。
yukihiroさん、山口さん、KAZUYAさん、
ライヴに携わったスタッフさん、
そしてあの日ライヴに来ていたお客さん、
すべての方に心から感謝。
2017年最高の経験をさせていただいた「ACID ANDROID LIVE 2017 #2 TAIPEI」でした。